第3回折り紙の科学・数学・教育 研究集会


プログラム
10:30-10:40 インフォメーション
10:40-11:10 情報科学としての折り紙  上原 隆平(北陸先端科学技術大学院大学 情報工学)
概要:展開図折りは、得意な人と苦手な人とがいる。では達人には「正しい」展開図はいつでも「折れる」のだろうか。1996年、Bern氏とHayes氏によって否定的な結果が示されている。展開図を平らに折り畳めるかどうかを判定する問題は、計算量理論的に困難な問題なのである。情報科学の観点から、折る「手順」も、折る「線」と同様に重要な情報である、と言える。本発表ではこの結果の概要を紹介し、展開図による折り紙の表現の限界を探る。
11:30-12:00 折紙展開図からの紙の重なり推定と結果のCG表示手法について  三谷純(筑波大学 情報工学)
概要:山谷の別が含まれる展開図情報から、その折りたたみ後の形状と紙の重なり方を推定する方法と、得られた結果をCG表示する方法について述べる。提案手法では平坦折りされるものを対象としているが、「ねじり折り」のように紙の重なりにループを持つ場合でも妥当な結果を得ることができる。また、このように重なり順にループを持つものを適切にCG表示することは難しい問題であったが、この問題を解決する手法も提案する。
12:20-13:20 昼休み
13:20-13:30 インフォメーション
13:30-14:00 三次元折紙設計ツール"Origamizer" 舘知宏(東京大学大学院 情報工学 建築)
概要:三次元多面体として表現された自由な立体形状を不切正方形一枚折りで実現するための、線対称な襞分子を用いた効率的なアルゴリズムを提案する。また提案アルゴリズムに基づいて、自動的処理およびユーザの直感的操作で三次元折紙の展開図をデザインするためのシステム"Origamizer"(情報処理推進機構2006年度下期未踏ソフトウェア事業(未踏ユース)開発成果)に関してデモを交えて発表する。
14:20-15:00 四角いミウラ折り? 三浦公亮(宇宙工学)、安彦由美(miuraori-lab デザイン)
概要: 従来、折り畳み文書としてのミウラ折りの形は、その数学モデルそのままであり、畳まれた形は平行四辺形である。一方、人の身の回りの空間のすべての文書のかたち、それを入れるファイル、書棚もすべて長方形を基準としているから、ミウラ折り文書には長方形の表紙を装着して対応してきた。この研究では、ミウラ折りの折り畳みプロセスを分析し、折り紙と切り紙の技術により、畳んだ形状を四角形にする方法が存在することを示す。
15:20-15:50  折り紙の折パターンを利用した医療デバイスの開発 栗林香織(東京大学生産技術研究所 マイクロメカトロニクス)
概要:動脈瘤の治療に使われるステントグラフトという医療器具を、日本の伝統的技術である折り紙の折りパターンを利用し開発している。折り紙のパターンにより、ステントグラフトは、小さく折りたたむことができ、カテーテルを用いて容易に体内に挿入することができる。さらに、ステントグラフトを広げることにより、動脈瘤で破裂しそうな部分をサポートすることが可能である。「折り紙ステントグラフト」の実現のため、大学ベンチャー企業を立ち上げ、更なる開発研究を行っている。

日本折紙学会(JOAS:webman@origami.gr.jp) (担当:前川)