おりすじ

「芸は身をたすけるか」 田中まさひこ


 折り紙を始めてから20年近くになる。もちろん趣味としてであり、仕事としてではない。仕事は他にちゃんとやっているし、趣味も折り紙だけというわけではない。しかし対人関係においては「XXXをやっている」という本来の仕事の面より「折り紙をやっている」ことのほうが印象が強いようだ。このためか最近では公式の場でも「折り紙をやっている」とか「折り紙の専門家」などと紹介されることが多くなってきてしまった。折り紙を仕事にしているわけではないのに。
 昨年の夏にCG(コンピュータグラフィックス)の機材が導入され、勤務先で(仕事の一部として)CGが行えるようになった。導入当初に講師の方をお招きして何日間か講習を受けた。その時に「折り紙をやっています」と自己紹介したところ「悪魔を折ってください」と切りかえされた。「本(ビバ!おリがみ)を買ってきてそれを見て(徹夜で)折ろうとしたのだがどうしてもだめだった」という話だった。さっそく折ってさしあげた。また、講習の最後の日に「折り紙をやっている人は理解が早い、前にもそんな人にあった事がある」と言われた。それが事実なのか、またその人が誰なのか私は知らない。
 他の場面でも「折り紙をやっている人は器用だ」とか「辛抱強い」などということを耳にしたことがある。そのうち「折り紙をすると頭が良くなる」「折り紙をすると痩せる」「折り紙は万病に効く」「折り紙をすると幸せになれる」なんてことまでいわれるようになるのではないだろうか。
 折紙教(!)会の陰謀を恐れているこのごろである。

TANAKA 1992 8/28