おりすじ

「エッ、またなの?」 山梨雅弘


 どーも、二人目の山梨です。折紙って遺伝とか、家系とかあるのかネ。(これじゃ、前号と同じだ。)
にわかに騒がしくなった折紙事情、うすうす知りつつ、18年も生き馬の目を抜くデザイン屋に明け暮れていました。昨年退社し、ビンボーひまだらけの古本屋をはじめた開放感で遅まきながら、季刊「をる」を手にしました。中学まで熱中していたのと別世界に成長した折紙との再会。 41才過ぎて、モーレツな折紙欲をかかえて訪れたおりがみはうすに頭は爆発。こんな本、紙あったの!
 以来、人の作を折り、私なりの創作もはじめ、しかし多少の疑問も感じるようになりました。設計する折紙は大歓迎。でも不切一枚折りのためだけに、15cmの紙から5cmに満たない作になるなら、紙の面積のほとんどは無為に収納されているはず。 部分に厚さが集中し、折りにくく、薄い部分は強度不足な、マズイ設計も散見されます。末端肥大症的な、カドの数の帳尻合わせ。(効果的な作品もむろん有るが。)
 その疑問に少し答えてくれたのは、西川氏のカブトムシと世浪氏のコマイヌ。紙の内部も生かされていて、大きく折れる。紙圧もうまく分散されていて無理がない。強度バランスも良好。折鶴のように紙自体がロック機構となり、形が崩れにくい。
また、大きく仕上がるから、小さい紙でも再現性が良い。こんな一般的評価基準、不切一枚折りに求めるとさらに高度な設計になるはず。  CAD、長方形採用で、これまでの技術の粋としての理想、不切一枚折りの意義も、ジグソーパズルでしかなくなりつつあるなら、むしろ紙の特性を生かす折紙、ムダ、ムラ、ムリのない設計思想や、奥の手、切るを使ってでも大きく、だれでも折れる工夫にも間口を広げては?
 私はというと、まだつたない設計力ながら、昨年末、ジュラシックパークの生命感ある恐竜が折りたくて、鶴の基本形の対向する2枚の中央を切り、カドを増した「ヅルの基本形」からプロポーションの良い恐竜がたくさん折れることを発見。アゴも指もありませんが、ノーディフォルメが自慢。菱形に応用すれば、首の長い竜も。なにより15cmの紙で、10 cmを越すサイズ。いずれは私も、これらを不切化できるでしょう。
 設計する折紙というコンセプトがもたらした無限の広がり。一部マニアのものだけでなく、新しく伝承できる折紙への目でもあって欲しいと考えるのは、私だけではないはず。
子供の手遊びも、パズルも、芸術も等しく折紙の特徴でありうる。
うまく発展させてください。一枚で二度おいしい二体一枚折りなどの、新テーマがとても面白い。
発見が多いほど楽しいのは「趣味」の醍醐味。つぎは20手(折図)に納まるリアル恐竜?それとも障子紙一本まるごと使った長方形折り?ひょっとすると…。
 私たち造形屋には、ヒョータンからコマの妙技、あります。

M.YAMANASHI 1995 2/15