当時人生の成り行きで図書館学の勉強に打ち込んでいた私は、スクーリングを控えその準備に忙しかった。通信教育で司書資格を取ろうと目論んでいたのである。数ヶ月後、もくろみは成功する。とはいえ当てにしていた新設の市立図書館員の口は、過酷なる年令制限の壁にぶち当たり挫折。しかし好運にも、移転したてのピッカピカのS女子大の図書館に産休要員として採用され、しばし充実した日々を送る。だが当然の事ながら、それは幸せな一家庭に小さな家族が一人加わるその日までの期限付き。結局その後の職場で司書資格が生かされることは二度となかった。
こうして「図書館に勤める人」になり損ねた私は、無難に「図書館を利用する人」になりきるのであった。S女子大が被服・美術系だったことの余韻だろうか、たまに図書館に立ち寄ると自然に美術書なんぞにも手が伸びる。そんなある日、『箱の百面相』という一冊の小さな本が私の興味を引く。美術の本棚に折り紙の本が。これは果たして図書分類法に適っているのだろうか。軽いとまどいを覚えながら手にしたとたん、私の目はその表紙に釘付けとなった。それは未知の魅力をたたえた美しいワンダーランドへの誘い。ユニット折り紙とわたしの最初の出会いである。 (つづく)