川崎敏和さん逝去

 日本折紙学会顧問・川崎敏和氏が、2026年3月4日に享年70で逝去されました。

 川崎敏和氏は、1955年、福岡県久留米市に生まれ、九州大学理学部、同大学院で学んだ数学者です。大学に入学したころから折り紙の創作をはじめ、立体的で華麗なバラの花(世にいう「カワサキ・ローズ」)をはじめとする、数々の作品を創作しました。また、折り紙の数学に関する研究者でもありました。

 折り紙の数学に関しては、1997年に「折り鶴変形理論」によって、学位(博士号)を取得しています。純粋な折り紙の研究による博士号取得者としては、第一号者であると考えられます。また、平坦折りにおける折り目の角度に関する定理・「川崎定理」は、氏の名前からとられたものです。

 螺旋状の構造が美しい「巻貝」や、紙の表と裏がまったく同じように現れる「表裏同等折り」の立方体や正八面体、桜の花を正十二面体の構造で立体化したユニット作品の「桜玉」など、数学者らしい幾何学的でユニークな発想を基にしながらも、紙を折ってつくるたのしさにあふれているのが、氏の作品の特徴です。氏の自論は「よい折り紙作品というのは何度も折りたくなるような作品」であり、それは「紙に逆らわず」「いい形を見逃さない」ことを理想とすることにも通じるものです。

 氏は、日本折紙学会に草創期から関わり、会の活動である、折紙指導員制度や研究論文誌『折り紙の科学』の端緒も開きました。長く評議員として、また2021年に評議員を退いてからは顧問として、会の活動に大きく貢献していただきました。機関誌の『折紙探偵団』に数多くの作品を発表し、会が中心になって編纂し、2024年に刊行された『折り紙の辞典』(朝倉出版社)第4章「折り紙の数学」の責任編集者も務められました。

 近年も、創作と研究への意欲、後進への指導への思いは衰えることなく、次々に新しい作品を生み出していました。朗らかなひとがらは、その作品とともに、全世界の折り紙の愛好家から愛されており、早すぎる逝去は、残念というほかありません。

(2026年 3月9日 文責:前川淳)

このページのバナーに用いた、川崎氏の主な著作の表紙写真です。