(注:2004/02)

折紙辞典 付録


付録1 日本折紙年表

本邦の折り紙の歴史について概観する。

6-7世紀頃
日本に紙の製法が伝わる。越前(福井県)の伝承では、「川上御前」という美しい女性によって紙の製法が伝えられたとされる。
にわかには信じがたい話である。
7-17世紀頃
よくわからない。岡村昌夫氏がよくわからないと言っているくらいだから、ほんとうによくわからない。
7-17世紀頃
折鶴が考えだされる。以来、推定56億7千万羽が折られる。(信じないように)
1797年
「千羽鶴折形」が出版される。のちに、桑名市の街おこしに貢献する。
18-19世紀
いろんなことがある。岡村氏と高木氏に聞いてくれ。
1926年頃
木下一郎氏(当時3歳)が独自に「宝船」を創作する。
1969年
「日本折紙協会」の前身である「日本折紙作家協会」が発足する。この頃からトーフ、スシ、チョトマテクダサイなどとともに、オリガミという言葉が海外でも通用するようになる。
1977年
折り紙がブームになる(「折り紙を楽しむ本」-1977-第5版-の帯の惹句による)以来、折り紙は常に静かなブームを呼んでいる。
1985年
阪神タイガースが日本一になる。
1989年
山口真氏によって「ギャラリーおりがみはうす」が開設される。日本で初の、常設の折り紙愛好家のたまり場に発展する。
1990年
木村良寿氏らの気まぐれな思いつきから「折紙探偵団」が発足する。名前からみて真面目な団体とは思われないが、実体も名前に相応しく発展する。
(その後、なんと、「折紙探偵団」は、「日本折紙学会」の母体となった)
1993年
「季刊をる」が創刊される。折り紙と折る文化を考え続けている。(ところで「折る文化」ってなんだろう。建国の父がサクラを折ったことで有名なところを見ると、アメリカ文化のことかもしれない)
1999年第7の月
折紙探偵団新聞第57号の編集会議が行われる。
(行われなかった。「折紙探偵団」が55号から雑誌(日本折紙学会機関誌)となったためである。先のことはわからないものだ。ノストラダムスさんにすらわからない)

付録2 故事成語

折り紙に関することわざ等をあげる。

古人の知恵を味わってもらいたい。

三十六折り折らぬに如かず
意味:折り込みが多いと、ポール・ジャクソンさんから文句を言われる。
知子豹変(ともこひょうへん)
意味:布施知子さんの機嫌が急に悪くなる。
嘘から出た真
意味:山口真さんの思いつきから事が始まる。
魯魚の誤り
意味:文字遣いに誤りはつきものだ。
例:魚縞庵義道の「千羽鶴折方」
間違いはふたつ! 制限時間は30秒!
羊頭狗肉
意味:頭の部分を見ると羊のようだが、もしかしたら犬かもしれない。
類:竜頭蛇尾(意味:正方形で竜を折るとどうしても体が短くなる) (神谷哲史氏の「龍神」のアイデアと技術によって、常識は覆された)
虎と狸とカバさんよ
類:捕らぬ狸の皮算用
意味:虎と狸と河馬を折ってみました。
一紙創伝(いっしそうでん)
意味:一枚の紙から作品を創り、それを伝えること
(おおっ、かっこいいじゃないか)

付録3 基礎単位

折り紙における基礎的な単位をあげる。

作品の評価を左右する重要な単位。通常作品では少ないほど、ユニット作品では多いほど、敵を驚かせることができる。敵?
工程
図の描き方によってどうにでもなるきわめて曖昧な単位。
ミクロン(μ)
羽鳥昌男氏の折りのずれを表す単位。
メートル(m)
TV番組での折り紙作品のスケールを表す単位。
2カ月
「折紙探偵団新聞」が刊行される時間の単位。のびちぢみがある。
2000文字
当ページの文字数。多いようで少なく、少ないようで多い。(などと書いて文字数を合わせる)
(新聞掲載時のネタ)

付録4 折り図の描き方

 「折り図」とは、「折り紙作品の工程を表す図」の「紙作品の工程を表す」の部分を省略した語である。哲学者H氏による検討をみるまでもなく、「曖昧な日本のわたし」としみじみとつぶやきたくなるような、実に日本語らしい不思議な言葉であるが、実際に「折り図」を描く際には、語とは逆に、いたずらな省略を慎み、きちんとした一定の組み立てを踏まなければならない。(おまえにいわれたくねーよってか)

 一般的に言って、「折り図」は、作品名と作者名に始まって、「できあがり」で終わる。以下、それらに解説を加え、よりよい折り図作成の一助としたい。

作品名
作品の名前である(そりゃそうだ)
例:なかよしのパンダ、なかよしの熊、なかよしのトンボ、なかよしのトガリハリナガケンミジンコ。
作者名
創作者の名前である(もっともだ)
「不詳」、「伝承」といった珍しい名がみられる場合もある。
作者のひとこと
創作の際に苦心した点などを書く。読んでもらえない。
(1)(2)(3)・・・
工程に付けられた順序番号である。いきなり(3)で始めてはいけない。
以下次号
図の完成が締切に間に合わなかったことを示す。
できあがり
作者がこうあってほしいという、理想化された完成図を描く。

後記

 「折紙辞典」は、折り紙に関する世界で初めての辞典として、連載開始以来、その非実用性と楽屋落ちが一部で認められ、成りゆきにしたがって書き続けられ、今日に至っている。1年余の連載の後、ここに第1版の完成をみて、各界の諸氏のご寛容に感謝するとともに、次号をどうするかについて何も考えていないわたしを発見しているところである。今後も、「あんなバカな文章を書くひとだとは思わなかった」という言葉を励みにして、一層の精進をはかる所存である。

1996年9月

折紙辞典編纂室 主幹 前川淳


1996 MAEKAWA